句ニキ 2023年夏至

句ニキとは句日記のこと。してみむとて、するなり。

みこちらくがきの中にある小痴楽。

水盤のそばにころがる螺子ふたつ
すごく鳴る草笛でこうふんするわ

ゆで卵はみなさん何でいかれていますか。私は拳でいっています。

恋人曰く六月われわれ幸運と

土曜は少し多めに歩く日。歩けば遠くへ行ける。

出てきて二人同じラクサが夏ですまる

不調気味。考え事が捗らない。

夢にさへ昨日見し花のあぢさゐのみ

雨上がりの日。チームで犬の散歩をする者らは、ぬかるんだ泥で犬の肉球が汚れないために人は道の端、犬は真ん中を歩くように並ぶ。すると必然すれ違うときは犬の群れを分けていくことになる。犬は波うつ。

かたばみの閉ぢたるとても愛すめり

小田原で吟行。水が豊富。

捩花の次なる花をねぢあげぬ
藻の花の震へどほしのひとつあり

夏はそば。そう思う。

余怒こめて夏大根は疾くおろせ

カラスの多い日。

焦螟の閨にぎはへる天気かな
自らを吞むも物かは夏の川

死んでもいいから軽に乗りたい。

打ちたるは朱夏追善のスネアひとつ

案外晴れつづき。

はつはつと茂みある三面護岸
驚きのかなへびが出て木に戻る

数学を専ら勉強してい(なかっ)た若いころは数学なんて生活の役に立たないと言われることもあったが、実際のところ日々の暮らしの中で数学の知識を欲する機会は多い。具体的に最近でもティッシュペーパーできれいな円錐を作る折り方が知りたかったり、いくつかのサイコロを使って見た目に明らかな1/365を出す組み合わせが知りたかったりした。

東京や夏至も夜更けのバスタオル

朝から雨を待つ。

神水の密かなること手に享くる

句ニキ 2023年芒種

句ニキとは句日記のこと。してみむとて、するなり。

はげしい晴れ。今日はホッケの身離れが悪い日だった。

よく眠りたまさか歌ひ茶のころに
野茨の潰ゆるは火の散れるごと

とにかく日焼け止めをな、歯磨き粉の隣に置くのは本当に良くない、私から言えることは以上だ。

石鏡かはせみがきて昼がきて
あかあかと武蔵が麦の吹かれけり

カップ焼きそばが焼いていないと言うならば、おしぼりだって絞っていない。

透明な傘で莕菜のほとりまで

過去の人気作がスピンオフでアフターストーリーを描き続けるせいで、本当の人気者だけは大人にならないでいられる、という観念が強化されていく。

夏の月楠の影のびちぢみ

夜も明るい。他人の身なりを褒めたいと思っても、そういうのって軽率にしづらくて難しいね。

サングラス鱒を焼くのは俺がやる
オフの日のサングラスあり塵被り

神奈川の女学生はいつも何か食っている。

コーヒーとサングラスいい波が来る
パラソルにモノキニでサングラスかな
走る子のための小さなサングラス

弱い風。かちくポケモン、ウマイアブラ。

食思ありわづか許りの涼しさに

真面目な靴を買った。足の計測してもらったら「ご自分では気づかれないでしょうけど、あなたの足は歩くとすごく疲れる形です」と衝撃的なことを言われた。歩き手としての自負が脆く崩れた。

月末が夾竹桃がまた人が

晴れてよかった。小さなわさびを植えてきた。

屈まれば山葵の花に水押し寄せ
道連や毟る石菖嗅がせ呉れ

とてっぽうもない雨。

通話いつも努力むなしくよく茂る

山手線で座っていると停車駅で老婦人が乗ってきて、端の人が席を譲った。一と駅進むと老婦人Bが乗ってき、端から二番目の人が席を譲った。自分はイヤホンを外した。次の駅に着くと乗ってきた老婦人Cに声をかけた。気づかいの輪。

六月と考へてゐるゆで卵

列島を雲が貫いている日。覚醒の先には必ず眠りがある。

大水のあとなる凪の三柏
ひと雨をあけて雲浮く芒種かな