句ニキ 2023年寒露迄

句ニキとは句日記のこと。してみむとて、するなり。

紙の句帖に書くことにした。

くびすぢに明るき秋の雨となる

え? フクロウ? と思って見回したらおじいさんだった。

小雨ふる秋分ながら入日かな
なまなまとふくべ濡らせる雨なれや

急に寒い。やめていただきたい。

みぞそばの水のひらめきくるぶしに
四辻や変化あさがほあを散らばる

白いスニーカーに黒の靴紐をかけてみた。ペン軸をアクロインキに変えた。

城郭は石を積みあげ彼岸花
蘆揺らし現れスワンボートの首
あといくつ桃が買へるか罪を数へ

増水した川に流される夢。なぜか助かってまず足が向いたのは交番だった。

一塊の虫の闇あり青みをり
ぐ、と虫の闇の茄子紺立上がる
足取りに霧の根が這ひ降りてくる

鼻血で起きる。寒いからかな。顔が洗えない。

白花曼珠沙華かけあしな昼をとびきりの蕎麦で

今日暑いなと思ったら暑い日だった。

点滴や秋風に袖遊ばれて

春にはほとんど見なかった紋黄蝶をよく見る。多くいるのは揚羽系だけども。

築城に木の香ありけり秋の蝶
たこ焼きと封筒とパンパスグラス

純粋な視覚的快感ってあるんだろうか。他の感覚への連想でなくて。

茫洋と月のあたりの雲明る
秋水や首のかたちがとても鴨

本場の味と言ったのが、ほんまの味としか聞こえないので、関西風なのかなと思う。

区区に水の澄み方帰り方
水引に夕暮が乗移るなり

サーキュレーターを切った。こんなに静かだったのか。

秋雨のあたら夜を夜と呼ぶならひ
毒きのこ人を瞶めて縛りつけ

良い風。

難波津はついて離れぬ露ひとつ

いつも行く薬局の薬剤師が明らかに荒れているのを見た。

彼岸花だらけ一粒万倍日

歯科助手の方の視線が明らかにTシャツに向くのを見た。うかつな服を着ていけない。

狭霧分け行けば大なる犬ゐてoh

職人が手間を惜しんで眠った一時間がこの昼さ。

川べりに水を握れば爽かに

SDイラストになって過ごしたい。

前景に藤の実をおく虚かな

死ぬまでに一度は行きたい、という考えについて考えている。一度行ったら死にたくなる場所。

瑟瑟と夜露いただく禾の属