句ニキ 2023年立秋

句ニキとは句日記のこと。してみむとて、するなり。

小さい子がお母さんにスーパーで「何でブルースはふるえるの?」と聞いていて楽しそうだなと思った。

友だちは名前呼びあふ夏休
また大胆かつ突然にさるすべり

自分一人しか持ち込んでいないライトのためにライトボーンをつけてこられているのがわかると心なしかホラーな感情が湧き起こる。

胸郭にアインシュタイン汗ひたひた

毎日を楽しいことで埋め尽くしていけば楽しいのは分かりきっているのだから、むしろ抜いていくことに重きを置きたい。楽しくないが嫌でもないことを増やしたい。

長鳴りが大きな蟬のそれならむ

忘れたいほどつらいことがあって、忘れたくて忘れた結果なにもわからなくなった、みたいな話が多い。

ばちばちと蟬の今際の岩の上

古い診療所とか医院みたいなところにそのまま居抜きで住みたい。

草刈りの全てが楽しきが如く

ポケモンスリープを楽しめている人たちが羨ましい。使って落胆するのが怖くて触れてもいない。何せどんなウェアラブルデバイスでも私の睡眠を完璧に捕捉できたものは今まで一つとてなかったのだから。

瞳孔は鶯の音を入るる穴

徐行のハイブリッド車って合唱グループがピアノで音取してるみたいな音出すよね。

本当に八月の本気がそれか

町はおまつり。みな手をつないで。

やさしくて七夕でよくなつてゐる

たぶん町中のカラスがここに集まっている。

あいにくと溽暑であるも書きつけぬ

体を真正面から捉えたときにVの字に見えるような隠毛の生えかた、あれはギフテッドと思うね。

夢でも死ぬのか青き鱰に引き摺られ

生きたままきのこになりたい。

炎天の乳が出てゐて申し訳

「こんばんは、過ぎていく夏に敬意をあらわしてるところなの。」

右腕の窓より垂るる夜の秋